2019/12/08 リンク切れを修正しました。Lydia Yatesさん、ありがとうございます。I fixed broken link for av-comparatives. Many thanks Lydia Yates!!
こんにちは。SIOS OSSエバンジェリスト/セキュリティ担当の面です。
こちらの記事は、以前(2016年11月)に書いた記事の更新版となります。
ここでは、Linux上で動作するAntiVirusを簡単にまとめ、各AntiVirusの性能面を実際にテストしたホワイトペーパーを紹介します。
Linux上のAntiVirusの必要性
筆者もかつてAntiVirusベンダーにエンジニアとして居たことから、よく「LinuxにAntiVirusは必要なのか?」と聞かれることが有ります。
Linux上でのAntiVirusの必要性について、筆者の考える所は以下になります。
- ユーザへのシェアの問題で対象外なだけだがLinuxでもMalwareは増加している
MacOSなどの議論でもよく言われていますが、LinuxはやはりWindowsに比べてデスクトップPCとしての普及率は圧倒的に少ないです。
OSのシェアはWikipediaに情報がまとまっていますが、サーバとしてのLinuxのシェアは36%(Windowsは33%)と一位になっていますが、デスクトップのシェアはLinuxが2.33%(Windowsh89.79%)と、圧倒的な差になっています。
攻撃側(マルウェア制作側)としては、当然汎用的に使えて攻撃に対するメリット(利益)も大きい所を狙ってきます。従って、Linuxは『たまたま、現在の所』VirusやMalwareが少ないだけです。
しかし、Linuxを対象にしたMalwareも増加してきています。2016年もアカマイから「BillGates」というトロイの木馬が報告されています。
- Linuxサーバには重要なデータがあるため襲われる可能性がある
上述でシェアの話をしましたが、Linuxはサーバのシェアは一位のため、重要なデータが保存されているサーバにもLinuxが使用されている可能性が有ります。例えばDBなどのような顧客データや重要なデータが保管されているサーバで、Malwareに感染することにより攻撃者へのバックドアが開かれて、重要なファイルやデータを盗み出されてしまう可能性が有ります。そのため、重要なサーバに関してはMalware対策も万全に行っておく必要が有ります。
- Linuxサーバを介してWindowsクライアントに二次感染する可能性がある
社内で使用されているLinuxサーバにWindowsからアクセスできる場合、Malwareに感染したWindowsクライアントからLinuxサーバ上を経て別のWindowsクライアントに感染する可能性が有ります。LinuxでSambaなどを用いてファイル共有している場合が一番想像しやすいと思いますが、Linux上でMalware検出を行う事で、Linuxサーバを介したWindowsクライアントへの二次感染を防ぐことが出来ます。
- 攻撃されたLinuxサーバからWindowsにMalwareを拡散される可能性がある
上記と似ていますが、Linuxの脆弱性、特に外部公開されているWebやDNSなどの脆弱性を用いてLinuxに攻撃者が侵入してきた場合、バックドアを開けてWindows用のMalwareを送り込んでくる可能性が有ります。
LinuxをサポートしているAntiVirusソフト
Linuxをサポートしている代表的なAntiVirusソフトを下記の表に示します。
製品名 | メーカー | URL |
---|---|---|
Symantec Endpoint Protection (SEP) for Linux | シマンテック | https://www.symantec.com/ja/jp/endpoint-protection/trialware/ |
McAfee VirusScan Enterprise for Linux | マカフィー | http://www.mcafee.com/jp/products/virusscan-enterprise-for-linux.aspx |
ServerProtect for Linux | トレンドマイクロ | http://www.trendmicro.co.jp/jp/business/products/splx/ |
Sophos AntiVirus for Linux | ソフォス | https://www.sophos.com/ja-jp/products/free-tools/sophos-antivirus-for-linux.aspx |
ESET NOD32 Antivirus 4 for Linux | ESET | https://www.eset.com/us/home/antivirus-linux/ |
Kaspersky Endpoint Security for Linux | カスペルスキー | http://www.kaspersky.co.jp/business-security/endpoint-linux |
ClamAV | OSS | http://www.clamav.net/ |
それぞれ特色が有りますが、導入のために比較・検討する際にはやはり検知率などの比較データが欲しくなります。
しかし、現状殆どのAntiVirusソフトウェアはこちらのAV-Comparativesのサイトなどでもわかるように殆どが90%以上の検知率を誇り、95%以上の所で鎬を削っている状態です。この検知率を見る限り、どのベンダーのAntiVirusソフトウェアを入れても、セキュリティ向上の度合いはほとんど変わらないと言えます。
2019/12/08: こちらのサイト(The ultimate data driven antivirus comparison)も参考にして下さい。
一方で、システムを運用する立場に経ってみると、AntiVirusをインストールすることによるサーバの処理能力の劣化度合いが気になります。
これは原理的に仕方のないことですが、各社でどのような状況でどれくらいの性能劣化が発生するかの資料が欲しい所です。しかし、残念ながら現状はそのような測定結果は公表されていません。
AntiVirusの処理のロジックと性能劣化の関係
そこでAntiVirusの処理がどのように行われており、どのような箇所で性能劣化が発生するのかを論理的・実データで示した測定結果が知りたくなります。また、それを元に効果的にAntiVirusを実環境で使用する運用方法も知りたくなります。
今回、SIOSでは
効果的なAntivirus の設定と運用
と題してホワイトペーパーの公開を始めました。運用方法まで含んで三部構成の予定で
(※)効果的なAntivirus の設定と運用(第一部 用語説明)
一般的なAntiVirusでの用語説明と動作、性能劣化がどこで発生するかの説明を行っています。
(※)効果的なAntivirus の設定と運用(第二部 性能評価比較)
代表的なAntiVirusが性能に及ぼす劣化の度合いを、実際にシステム定常状態がどの程度劣化するのかや、MySQLの性能がどの程度劣化するのかを測定することでまとめています。
効果的なAntivirus の設定と運用(第三部 効果的な運用方法例)
AntiVirusをなるべくトラブル無く、性能劣化も低い状態で運用させる方法をまとめています。
として、それぞれのホワイトペーパーのダウンロードが出来るようになっています。
(※)(2018/11/13: クリックでホワイトペーパーが直接見えるように変更しました。)
また、データはあくまでも弊社テスト環境で得られた参考データとなりますので、メーカーへのお問い合わせ等は避けて下さい。
これらの情報を公開することにより、皆様がLinuxサーバのセキュリティをAntiVirusを動作させることで強化する際の参考になればと考えております。
セキュリティ系連載案内
- OSSセキュリティ技術の会による日経Linuxでの連載「IoT時代の最新SELinux入門」がITPro上で読めるようになりました。技術の会代表で第一人者である中村さん等による、最新のSELinuxの情報やコマンド類等も更新されているのでお薦めです。
- OSSセキュリティ技術の会によるThinkITでの連載「開発者のためのセキュリティ実践講座」がThinkIT上で開始しました。技術の会の中の人間で、最新の代表的なOSSセキュリティ技術を紹介していきます。
- OSSセキュリティ技術の会により、ThinkITでLinuxSecuritySummit 2017のレポートが紹介されています。
- OSSセキュリティ技術の会の面により、@ITで「OSS脆弱性ウォッチ」が連載されています。
- OSSセキュリティ技術の会の面により、@ITで「OpenSCAPで脆弱性対策はどう変わる?」が連載されています。
日々のメモを更新しています。
セキュリティ関係で気になったニュースの備忘録を兼ねたメモを更新しています。個別で情報出せるようになる前の簡単な情報・リンクなんかも載せていきます。
セミナー情報1
2021/09/13 18:30から、OSSセキュリティ技術の会 第九回勉強会を行います。
7/30にリリースされたKeycloak 15で、FAPI(Financial-Grade API)、CIBA(Client Initiated Backchannel Authentication)に対応しました(Certificateはまだですが…)。またDevice Flowにも対応しています。これを記念し、KeycloakのFAPI,CIBAの主要開発者もお招きして、「KeycloakのFAPI CIBA 対応記念の巻」と題して勉強会を行います。
Connpassのこちらがプログラム内容と申し込みの詳細になります。奮ってご参加下さい。
セミナー情報2
コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS)2021併設のワークショップ、 OSSセキュリティ技術ワークショップ(OWS) 2021の企画講演セッション及び、 一般論文セッションの発表募集をさせていただきます。
今年もオンラインでの開催となり、OWSトラックの一般論文セッションの論文募集(申込締め切り: 2021年08月02日(月))と企画セッションを行いますので,ご投稿とご参加よろしくお願いいたします。