こんにちは。SIOS OSSエバンジェリスト/セキュリティ担当の面 和毅です。
09/07/2021にLinux Kernelの脆弱性(Important: CVE-2021-3715)が公開されました。今回はこちらの脆弱性の概要と、各ディストリビューションの対応について簡単にまとめてみます。
[過去の関連リンク]
Linux Kernelの脆弱性(CVE-2021-40490)
Linux Kernelの脆弱性(Moderate: CVE-2021-3655)
Linux Kernelの脆弱性(Moderate: CVE-2021-34556, CVE-2021-35477)
Linux Kernelの脆弱性(Important: CVE-2021-37576)
Linux Kernelの脆弱性(Moderate: CVE-2021-37159)
Priority
CVE番号 | 影響するバージョン | 一次情報源 | Priority | CVSS Score / CVSS Vector |
---|---|---|---|---|
CVE-2021-3715 | Red Hat: 7.8 Important | Red Hat: CVSS:3.1/AV:L/AC:L/PR:L/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H |
修正方法
各ディストリビューションの情報を確認してください。
CVE概要(詳細はCVEのサイトをご確認ください)
- https://cve.mitre.org/cgi-bin/cvename.cgi?name=CVE-2021-3715
- 特権昇格の可能性
- Linux Kernelのネットワークサブシステムで、フィルタの識別子操作の際に”Routing decision”識別子でuse-after-free状態が発生するという問題が見つかりました。この問題を利用して、非特権のローカルユーザはシステムで権限を昇格させることができる可能性があります。
- この脆弱性はRed Hat Enterprise Linuxではバージョンによってレーティングが異なります。
- RHEL7ではModerateになっています。これはRHEL7では、非特権のユーザ/ネットワークネームスペースをデフォルトでは無効にしており、この脆弱性を悪用するにはCAP_NET_ADMINケーパビリティが必要になります。
- RHEL8ではImportantになっています。これは、RHEL8では非特権のユーザ/ネットワークネームスペースがデフォルトで有効になっており、これを用いてCAP_NET_ADMINケーパビリティを得てローカルユーザがこの脆弱性を悪用できる可能性があるためです。
緩和策
緩和策としては、cls_route.koモジュールをブラックリストに入れて読み込めないようにすることです。
また、cls_routeが使用されている場合でも、RHEL8の場合にはuser.max_user_namespaceを0にすることで非特権ユーザネームスペースを無効化することが出来ます。
# echo "user.max_user_namespaces=0" > /etc/sysctl.d/userns.conf
# sysctl -p /etc/sysctl.d/userns.conf
主なディストリビューションの対応方法
詳細は、各ディストリビューションの提供元にご確認ください
- Debian
- Red Hat Enterprise Linux/CentOS
- Ubuntu
- SUSE/openSUSE
対処方法
各ディストリビューションの案内に従い、アップデートを行ってください。全てのRed Hat製品でパッチが行き渡っているかを確認するには、Red Hat SatelliteやKatello、Spacewalk等を使うと管理が便利でしょう。
また、OSの再起動が発生しますので、pacemakerなどOSSのクラスタ製品やLifeKeeperなどの商用のクラスタリング製品を使うとサービス断の時間を最小限にすることが出来ます。
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- OSSセキュリティ技術の会の面により、@ITで「OpenSCAPで脆弱性対策はどう変わる?」が連載されています。
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